GM:では、皆さんは疲れ切ったアンナを背負って王都ログレスの城壁までたどり着き……。
アオイ:やれやれ、これで何とかなりますね。
GM:……赤枝の騎士に取り囲まれます。
レイ:ちょっ!
レオン:ひょっとして、主戦派に取り込まれた部隊ですか?
GM:その通りです。恰幅の良い幹部騎士が現れ、皆さんを拘束すると宣言します。
「赤枝の騎士団大隊長のオーレリーである! 待機命令を無視して勝手に出撃した罪状で、諸君を逮捕する」
バジル:待ってくれ! 俺たちはアンナを救出したんだぞ!
GM:「おおかた魔法による幻影であろう」
レオン:こいつ、開戦の詔が下るまで状況を引き延ばす気ですね!
レイ:どうします? 正直もう一戦するほどMPに余裕は……。
バジル:ここまで来てっ!
「黙りなさいっ!」
膠着した状況を吹き飛ばすように、凛とした良く通る声が響き渡った。
騎士たちはうさんくさそうに声の主に視線を合わせ、弾かれたように直立不動になった。
「彼らは命がけで私を助けてくれた英雄です。恩人への侮辱はこのアンナ・エルーランが許しません!」
流石のオーレリーも「ぐうっ」とうなり声をあげて包囲を解くように命じるしかない。
「た、大変失礼いたしました。それでは某が先導を……」
大方王に謁見して救出の手柄に自分を割り込ませる腹だろうが、アンナはそれを許さなかった。
「いいえ。まだ魔族が近辺にいるかも知れません。貴隊は王都周辺を警戒してください」
オーレリーは悔しそうに奥歯を噛み締め「畏まりました」と敬礼した。
アオイ:ざまぁwww
バジル:アンナ、ありがとな。
バジルの言葉に、アンナは疲れ切った顔で、しかし嬉しそうにぺろりと舌を出した。
「えへへ、どうだった? 私の王女ぶりは?」
銃士たちは半ば呆れ、半ば頼もしそうに将来の主君を見つめた。
こうして、「英雄の時代」最初の1日が終わったのだった