オーバン銃士長の経歴は謎である。
詳しい人間によると、オーバン・オーバンなどと言う人物は聞いたことが無いと言う。外国からの移民か、無名な人物を抜擢したのか。
公文書を洗えばはっきりするかも知れないが、個人の興味でそんなものを閲覧できない。出来たとして、誰がそんな事の為に貴重な休日を潰すと言うのだ。
と言うわけで、銃士長の前歴は銃士隊7不思議のひとつにカウントされている。
レオンたちが入室すると、銃士長はお気に入りのひざ掛け椅子(私物)にぐったり腰をおろして、「あー、疲れた」とお茶をすすっていた。
それを苦笑気味に見下ろしているのは、銃士隊のスポンサーのひとりであるジュリアーノ・バリッラだ。
いかつい顔つきと体躯から現役銃士か騎士かと勘違いされるが、剣も乗馬もからっきし駄目な根っからの商人だという。
「やあ諸君。お疲れ様。内務省のお役人に散々嫌味を言われたけど、とりあえず君たちが保護した少年は引き渡さなくてすんだよ。まあ、あちらさんも持て余してるだろうから、うちに文句を言って憂さ晴らしができた上に、面倒事まで押し付けて万々歳と言うところだろう」
「嫌われてますねぇ。銃士隊」
オーバン銃士長の説明にジュリアーノは暢気に笑う。笑いごとではないのだが。
お役所にしてみれば、銃士隊は後発の外様。それなのに民間からの寄付で潤沢な予算と人員を動かしているのがとにかく面白くない。加えて、構成員に騎士爵を持たない者が多いのも、既得権を脅かされるという警戒心の元だ。
本来銃士隊は正規の騎士を補完する組織の筈なのだが……。
「それで、少年の様子はどうだね?」
バジル:今食事と休息をとらせています。
GM:「ふむ、やはり人身売買かね?」
レオン:流石話が早いです。彼は戦火で故郷を逃れる途中、人買いに捕まったようですね。手持ちの情報を公開しましょう。
GM:「しかし、その官僚出身の騎士も酷いもんだね。騎士団の仕事をしていれば、子供の姿にピンときそうなものだけどねぇ」
「とりあえず、付き合いのある商会には注意喚起と情報提供を呼びかけます。『あまりに安い業者には裏があるので、変な営業を受けたら知らせて欲しい』とでも」
「お願いいたします。銃士隊は組織を追う事にしましょう」
ジュリアーノは一礼して退出しようとドアノブを握り、思い出したように振り返った。
「そうだ、バジルさん。ユーリの奴がまた無理をして怒られたそうですね?」
バジル:あー、そう言えば今朝そんな事があったような。
GM:「あいつは色々焦って周りが見えなくなってます。バジルさんからも気を付けてあげて貰えないでしょうか?」
バジル:ジュリアーノはユーリと知り合いなのか? まあいいや。確かにあいつのことは心配だから、分かりましたと返事をしよう。
GM:「頼みます」と言ってジュリアーノは商会へ戻っていきます。
で、残されたオーバン銃士長ですが「そう言うわけで、組織の調査は君たちに任せるから」とさらりと言い放ちます。
レイ:なんか予想通りです(笑)
レオン:まあいいじゃないですか。ここで他の小隊に任せると言われたら気になるでしょう?
バジル:そうだな。じゃあ、ジャンの為にも頑張るか。