少年銃士隊とエルマンの部下たちが当たった個人商店は、天文学的な数になったと言われている。

 しかし、あるひとりの購入客の情報が目に留まった。
 店主と会話した時、やたら「宮仕え」と言う言葉を乱発し、チップだと言って多額の金を置いていったのである。まるで、自分の存在を憶えて欲しいかのよう・・・・・・・・・・・・・・・・だったと店主は語る。


レイ:どう思いますか?

レオン:現時点では分かりませんが、確かにこれはくさいですね。他の件と並行して、この線を追うべきだと思います。

GM:「たっ、大変ですっ!」

 駆け込んできた別行動中の小隊長ユーリが、バジルに一枚の紙を手渡す。店主から例の客について聞き取って作った似顔絵である。

 バジルはその絵をのぞき込んで、絶句した。
 アンナを護衛していた、侍従のひとりだったからだ。
 バジルは仲間たちの顔を見回し、宣言した。

銀嶺城へ向かう!」


◆◆◆◆◆


GM:では銀嶺城です。皆さんが到着すると、城の人間が慌ただしく走り回っています。

レイ:? 何かあったんですか?

GM:使用人の生活スペースが封鎖されていて、赤枝の騎士が警備していますね。皆さんを見つけたコランタンが手招きして、中へ入れてくれます。

バジル:ありがとうコランタン。

GM:「いいからはやく行ってください。エトワール隊長が待っています」

レオン:これは大ごとのようですね。急いでエトワール卿の元へ行きましょう。

 部屋の中では、エトワールと数名の騎士が5体の死体を調べていた。
 纏っているのは禁色きんじきとして王家に侍る者だけが許される紫の官服。
 彼らはアンナを護衛していた侍従たちだった。

アオイ:やられたっ! 先手を打たれました!

レオン:とにかく、話を聞きましょう。

GM:「服毒したようだ。これはかなり苦しんで死んだな。『姫を守れず王に申しわけが立たない。死んで詫びる』と言う遺書が連名で残されていた」

アオイ:うそくせぇ!

バジル:とにかくここを調べてみよう。

GM:では〔幸運〕で判定を。

レイ:〔幸運〕? 〔知力〕とかではなく?

GM:この限られた時間で何かを見つけるのは、運の領域ですので。

バジル:(ダイスを振る)よし、何とか成功した!

レオン:さすが主人公!

GM:死体が着ている服のひとつが、ポケットが二重になっていますね。中から小さな鍵が出てきます。

アオイ:何でしょう? わざわざポケットを二重にするなら大事なものかも知れません。

レオン:多分、執務机では? こんな小さな鍵が付いてますよね?

GM:ビンゴです! 中から本当の・・・遺書が出てきます。
 内容は、「ちょっとした油断から弱みを握られ、『彼ら』の操り人形になってしまった。アンナ姫の誘拐に協力する様に言われ、紋章を渡された。せめてもの抵抗に土産物の紋章にすり替え、店主にチップを与えて証言が残るようにした。だが、きっと自分は殺される。あの時彼らの誘惑に乗らなければ……」などと書かれています。

アオイ:やはり消されましたか。

レオン:「彼ら」とは?

GM:詳細は分からないのか触れられていませんが、「教団」と名乗っていたそうです。

レオン:……っ!!

バジル:どうしたレオン?

レオン:いえ、それより、アンナの居場所は?

GM:馬車を使ってヴァンスターへ運び込むそうです。今は街道を移動中でしょう。おそらくそこで……。

レイ:急ぎましょう!

GM:話を聞いていたエトワールが激を飛ばします。「ヴァレリーにこの事を連絡しろ! 軍馬をありったけ持ってこい! 馬術に自信がある者は私に続け! 追撃するぞ!」

バジル:エトワール! 俺たちも!

GM:「もちろんだ! 部隊を編成している時間は無い! 準備ができた者から出発するぞ!」

レオン:こちらも銃士隊詰所に連絡して戦力を出してもらいましょう。ここは総力戦です!

 こうして、彼らが王立銃士隊を名乗ってから最初の大規模な戦いとなる、「ジルエット風見鶏街道の戦い」が幕を開けようとしていた。