ことは:と言うわけで第7回行くわよー。

真

真:本編も第15話『使者として・・・(後編)』が公開されたことだし、連動企画だね。ところで、はぎわらの『王立空軍物語』は進んでるの?

ことは:相変わらずスランプとか言って『GS美神』を全巻読破してたわ。焼き物そっちのけで料理の批評農薬の悪口ばかりしているどこぞの至高な陶芸家みたいになってるわね。

真:だからそういうスレスレ発言は控えてってば!

ことは:まあ、創作意欲が消えたわけじゃなくて少しずつあれこれ書いてるみたいだから、もう少しだけ待ってあげて頂戴。

真:で、今回はミリメシという事だけど、要は軍隊用の食事だよね?

ことは:軍隊の食事と言っても、今回は前線とか行軍中に食べる保存食を解説するわ。

真:どう違うんだい?

ことは:天と地ほどの差があるわ。例えば、戦前の軍隊はかなりいい食事ができたと言うか「お米のごはんがいっぱい食べられる」と言って人を集めていたの。実際栄養満点で味も美味しかったらしいわ。と言っても「確かにシャバの基準ではいっぱい食べられたけど、訓練で体を動かしておなかが減るから結局足りなかった」なんて証言もあったり。

真:へぇ、言われてる軍隊とは違うイメージなね。

ことは:この辺は時代によって変わったりしてるけどね。ただ前線ではそうはいかないわ。輸送力に限度がある中で戦力や武器弾薬も送らないといけないから食事の質までこだわっていられなくて、粗末な食事や現地調達に頼ることになったようね。はぎわらの祖父はエリートの砲兵ガラだったのに馬の飼料を盗み食いしないといけないぐらい飢えていたとか。

真:うわー。

ことは:エリドゥだと飛行動物による航空輸送があるから地球と同じ基準では測れないけど、やっぱり作中にあるように干し肉やチーズ、ビスケットがメインなんじゃないかしら。

真:「実用性一点張り」って言う表現からわかるけど、つまりは美味しくないのね。

ことは:仮においしかったとして、何週間も同じものを食べ続ければどうなるか自明の理ね。満漢全席だって毎日食べ続けたら拷問よ。

真:確かに。

ことは:あと、チーズやパンには虫が湧いたりするわ。捨てる余裕なんかないから虫だけ取り除いて食べるわけだけど。

真:ひいっ!

ことは:驚き過ぎよ。

真:小学校の時クモを服の中に突っ込んだのは誰だよ? あれからずっと苦手なの!

ことは:それは悪いことをしたわね。じゃあお返しに私の服にクモを好きなだけ入れてもいいわよ?

真:なんのプレイだよそれ。良いから続けてよ。

ことは:おーけー。で、現代のレーションの話になるけど、読者諸氏の世界では自衛隊が採用しているのは缶詰の戦闘糧食Ⅰ型とレトルトパウチのⅡ型ね。写真は衛隊神奈川地方協力本部のウェブサイトから拝借して来たわ。左がⅠ型、右がⅡ型ね。

Ⅰ型は混ぜご飯とか乾パンとかだけど、Ⅱ型からはレパートリーがぐっと広がってチキンステーキとかハンバーグみたいな洋食も楽しめるようになったみたいね。味も上々だそうよ。豪華さはイタリア軍には負けるみたいだけど。

真:イタリアって、戦場でスパゲッティ茹でてたんだっけ?

ことは:それは風評被害ね。イタリア軍に前線でスパゲッティを食べる習慣なんてないわ(※水を大量に使わないパスタは食べる)。後方の司令部が食べていたのを誤認もしくは意図的に捻じ曲げられて伝わったと言われてるわよ。ただし、彼らの食へのこだわりが凄いことは確かだけど。

真:ふむふむ。で、缶詰とレトルトパウチってどっちが便利なの? 後発のレトルトの方が凄いんだろうけど。

ことは:その通り。レトルトはかさばらないし加熱時間が短いし、火が無くても劇中のように加熱剤を使えば温めて食べられるの。戦場は温かい食事はストレス緩和に繋がるんだけど、火を焚けばそれだけ発見されやすくなるわ。そんな問題も加熱剤で解決よ。

真:なるほど。じゃあ完全に上位互換なんだ。

ことは:そうでもないわ。耐久性は缶詰が圧倒的に上よ。保存時間も長いようね。

真:うん、よくわかったよ。で、僕らの『真秀ろばの国』世界のレーションはどうなってるの?

ことは:こちらの日本は敗戦直後に寒冷地(北海道)で実戦を経験し、何度か外征を経験している事が大きな違いね。特に北海道では米軍の優れた補給体制兵站の凄さを目の当たりにしているわよ。その影響で戦闘糧食Ⅰ型はより多彩で実用的なものになっているわ。ベトナムや中東で単調な食事しか配給されなかったりしたら士気にかかわるし。

真:で、味は?

ことは:( ̄ー ̄)ニヤリ あなたも良い感じに染まってきたわね。

真:た、たまたまだって! たまたま台詞が被っただけだから! そのドヤ顔やめて!

ことは:中の人(老年期)もさっきの陶芸家と同じ人だしねw 話を戻すけど、味は勿論折り紙つきよ。メーカーに出す開発費も増えてるだろうから、外地で大変な思いをしている自衛官の皆さんも大喜びだったと思うわ。

真:それで、その後レトルトになるの?

ことは:一足飛びにはならないわ。北日本との統一を果たした私たちの日本では、日本風ロシア樺太風料理に慣れた北系日本人を大量に受け入れる事になって、南北の食文化が混ざり合う事になったわ。

真:うん、そんな話を谷利さんのコラムでも解説してくれていたけど。

ことは:当然彼らの中には自衛隊に志願する人もいるわけでしょ? その人たち向けに樺太風の料理を出さなかったら不公平じゃない?

真:確かに、異文化同士でやっていくのって色々大変だ。元は同じ大日本帝国なのに。

ことは:と言うわけで、戦闘糧食Ⅱ型では、ロシア風ピラフとかピロシキとかが楽しめるようになったの。

真:それは普通に美味しそうだね。南出身の自衛官も喜んだんじゃない?

ことは:それはもう。2011年現在、レトルトパウチの戦闘糧食Ⅲ型に移行したのに、闇市場では缶詰のⅡ型が人気らしいわ。

真:闇市場? 何だか穏やかじゃないんだけど? 

ことは:自衛隊用のレーションは基本門外不出だから、何処かで売っているとしたらそれは偽物か横流しよ。いつの世も転売ヤーみたいな不届き者はいるのね。ああ、腹が立ってきた。PS5楽しみにしてたのに!

真:ことは、落ち着いて! こっちの日本は西暦2012年だから!

ことは:そうだったわ。で、戦闘糧食Ⅱ型をレトルトに更新したのが戦闘糧食Ⅲ型なわけだけど、ボルシチやらビーフストロガノフだのやりすぎな内容になったわ。こんなのソビエト軍だって出してないのに。

真:何事も徹底しないと気が済まないのが日本人の気質だからねぇ。

ことは:所謂「特亜大戦」の時、同盟国の兵士たちは自衛官を見つけるとレーションの交換を申し出たそうよ。新兵がよく考えなしに交換して痛い目を見るメシマズを引くとか。そのうちに「何処何処の国のレーションは何々が旨いからそれと交換しろ」みたいな手製の種本が出回ったそうね。

真:え、軍隊ってメモ禁止って言ってなかったっけ?

ことは:食の誘惑の前には規律なんて無力よ。でも、実は種本に頼らないで済む有効な方法もあったんだけどね。

真:へえ。そんな方法があるんだ。凄いやり方なの?

ことは:まったく凄くないわ。とりあえず交換相手をイタリア兵かフランス兵に絞るだけでいいんだから。

真:ああ……(察し)。

ことは:東西の美食大国よ? お互いWin-Winでホクホク顔だったそうだわ。おかげで終戦後帰国した自衛官から話が伝わって親伊、親仏感情がダダ上がりしたみたい。ドイツ人に「次はイタリア抜きでやろうぜ?」って冗談を言われても「いや、あいつらのメシは必要だ!」なんて訳の分からない返しをするようになったとか。

真:あの、皆さん祖国の命運をかけて戦争されてたんだよね?

ことは:戦争なんてくだらねぇぜ! 俺の飯を食え!」みたいな奴よ。

真

真:上手い事言ったつもりだろうけど、全然上手くないからね?

続く

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