ことは:皆さんお久しぶり! 解説の西城寺ことはです! 只今海上自衛隊の航空母艦〔ずいかく〕飛行甲板からお届けしています!

真:アシスタントの宮藤真です。ってなんで一学生の僕らがそんなところに? それにキャラ画像の背景はいつも通……。

ことは:こまけぇことは良いのよ! ここは葵紺碧氏の創作小説『「真秀ろばの国」導く、異世界新秩序』に登場する兵器やミリタリー設定を解説するコーナーよ。

真

真:というか、またこんなコーナー始めちゃったの? このコーナーの書き手は自分の作品も進んでないのに。

ことは:それが、コツコツと書き進めていた外伝がそろそろ脱稿するらしいわよ。

真:ならいいけど、いい加減SNSでも忘れられてるんじゃないかと心配になるよ。

ことは:さて、初めて『真秀ろばの国』を読んだ人向けに簡単に説明しておくわね。このサイトは創作集団『王立銃士隊』の情報ページよ。現在主宰でこの記事を書いている萩原優『真秀ろばの国』の作者葵紺碧、設定アドバイザー&模型製作担当の谷利が活動しているんだけど、このコーナーでは萩原優が連載している『王立空軍物語』のキャラクターとコラボがあったりするわ。

真

真:小説本編も載せておくね。興味がある人、片方の作品しか読んでいない人は是非この機会にどうぞ。


「真秀ろばの国」導く、異世界新秩序 葵紺碧
違う歴史を歩んだ日本が、突如異世界に転移。巨大な軍事力経済力を持つ特異点となった日本とその同盟国は、生存圏獲得のため異世界各国と交流を始めるが……。

王立空軍物語 萩原優
乱世の異世界ライズ。人々は門でつながった地球から武器や義勇兵を買い込み、泥沼の世界大戦に興じていた。たまたま北の孤島に立ち寄った7人のパイロットはこの島が敵の大艦隊に狙われている事を知り、島民を守るため決死の抵抗を決意する。


真

真:で、初回は何を取りあげるの?

ことは:勿論、タイトル画像にも載せたF14改〔トムキャット〕よ!



真:おおっ! かっこいいね!

ことは:でしょ? ハリウッドと『トップガン』がチャイナ資本に「くっころ」されても、この飛行機の美しさは変わらないわ!

真:それ以上はやめて! このサイトを潰す気!?

ことは:そうね。潰れるのは困るから魔除けのおまじないをしておきましょう。「天安門 1989 チベット ウイグル アンキモアンキモ!

真:煽ってどうするのさ! あと最後のネタ関係ないよね!?

ことは:まあそれはそれとして、そろそろ待ち合わせてる解説者が来る頃なんだけど……。


◆◆◆◆◆


???「よ、洋上迷彩の〔トムキャット〕だとおっ! この世界の海自には艦載戦闘機部隊が存在するんだな! なんていい世界なんだ! このベクタードスラスターを見ろ! 外観を大きく変えながら〔トムキャット〕のイメージを損なってない! いい仕事してますなぁ……」

???「あの、兄さん。お気持ちは分かりますがそろそろ待ち合わせの時間が……」

???「あ、そこの整備士さん! このエンジンP&Wじゃなくて、最初からGE社製なのか? それも違うっぽいけどメーカーは何処? 良いだろ公式に発表されてるだろうから減るもんじゃないし……」

???「……わかりました。じゃあちょっと失礼しますね兄さん」

ドゴッ!

……ズルズル


……ズルズル。


◆◆◆◆◆


真

真:ねえ、女の子が誰か引きずって来るけど、まさか解説役って……。

ことは:初回からゲストは濃い衆が選ばれたようね。

真:さらっと自分が常識人みたいに言わないでよね?

マリア:どうもお待たせしました。私はマリア・オールディントン。引きずってきたのは兄の南部隼人です。私たちは『王立空軍物語』に出演していて、『南部隼人の飛行機講座』と言うコーナーもやっています。

真:引きずってきたのって……。この人大丈夫なんですか?

マリア:義兄は頑丈なので♪

真:(……この人もヤバイ)

ことは:素薔薇すばらしいゲストをお迎え出来て光栄です。でもどうしようかしら? 解説役が伸びちゃってるけど。

マリア:大丈夫です。義兄ほどの知識はありませんが、簡単な解説ならできますので。

ことは:じゃあお願いするわ! メカとロリって最高の組み合わせよね!

マリア:私、あなたより年上なんですが……。


史実の〔トムキャット〕

マリア:ではまず読者の皆さんの世界で〔トムキャット〕がどのような飛行機かお話しましょう。東西冷戦の時代、ソヴィエト連邦はアメリカと向こうを張る超大国でしたが、海軍力、特に水上戦力では大きく劣っていました。

真:それはまた何で? 超大国なんでしょ?

マリア:色々理由はありますが、予算が陸軍に優先的に回されたことと、そもそも経験値が足りない事などですね。

真:経験値? そんなゲームみたいな……。

ことは:似たようなものよ。剣技のスキルばっかり伸ばしてた戦士がいくら最強でも、いきなり魔法の杖を渡されて戦えるかしら?

マリア:良くわかりませんがそんな感じだと思います。第二次大戦以降ソ連はろくな海戦を経験していません。東西の戦線で派手にぶちかましてベテランぞろいのアメリカ海軍とは前提条件が違うんです。もしお二人の世界のように大規模な海戦を経験し、日本の経験豊富な船乗りとドック・港湾施設を接収していればまた違うソ連海軍もあったんでしょうけど。

ことは:その辺の解説もいつかやりたいわね。

マリア:この時のソ連が恐れたのは米軍の空母機動部隊です。もし自分たちの拠点に大型空母が攻撃を加えてきたら、そしてもしそれが核攻撃だったら。

真:でも、そんなこと言っても対抗するには自分たちも空母機動部隊を整備するしかない気がするけど?

ことは:それじゃ時間がかかりすぎるわね。出来たとしてもシーパワー国家のアメリカと同じ土俵で勝てるとも思えないし。

真:じゃあどうするの?

マリア:いつもやっているようにしました。

真:いつも?

ことは:ああ、なるほど!

マリア:爆撃機や潜水艦から空母に向けて手当たり次第のミサイルを撃ち込みます。所謂「飽和攻撃」ですね。ほとんどは撃ち落とされるか明後日の方向へ飛んでいくでしょうが、1発命中すれば何億・何十億ドルもする大型空母とそれより貴重なベテラン乗組員を海の藻屑に出来ます。しかも一兵も失わずに。

真:え、えげつない。

ことは:それでこそソ連よ! オブィエークト!!

マリア:お、おぶ……?

真:ほっといてやってください。適当に盛り上がったら戻ってきますから。

マリア:ま、まあいいです。これからが本題なんですが、飽和攻撃の対策を強いられた米国は考えました。「なら敵がミサイル撃つ前に落としてしまえばいいんじゃない?」と。こうして爆撃機を狙い撃てる長距離空対空ミサイル〔フェニックス〕が生まれ、新型の艦上戦闘機にこれを搭載することになりました。後の〔トムキャット〕です。



ことは:あれ? なんか思ってたのと違うわよ? 映画だとミグ相手に格闘戦とかしてたわよね? あんまり狙い撃ちする戦闘機ってイメージがないけど。

マリア:そこが人気者たる所以です。〔トムキャット〕は長距離対空ミサイルを扱う関係上、パイロットの他に必要とするレーダー員がデッドウェイトです。そして可変翼のせいで主翼に強度が持たせられず、普通に考えたら速いだけの戦闘機になってしまいます。そう、普通に考えたら!

ことは:という事はミグに並走してキャノピー越しに写真とか撮れるのね!

マリア:そ、そこまでは……。そもそもアレ、ミグじゃないですし。

ことは:ざんねん。

マリア:〔トムキャット〕は”リフティングボディ”を採用しています。機体そのものが揚力を得る形状なんですが、〔トムキャット〕はこれのおかげで主翼にかかるGを大幅に軽減でき、格闘戦もイケるのです!

ことは:ふむ、つまりジムスナイパーカスタムが格闘戦が苦手と見て接近してきたゲルググを前腕部から引き抜いたサーベルでなで斬りに……。

真:だから! そういう話はマリアさんは分からないでしょ!?

マリア:そうです! そんなニッチな例えを出すより、ガンキャノンを侮って接近してきたザクのモノアイをパンチで潰す展開のほうが……!

真:(頭を抱える)

ことは:それで、他にも〔トムキャット〕の特徴はあるかしら?

マリア:もちろんあります。〔トムキャット〕と言えばこれ、と言うのが可変翼の採用です。

真:さっきも出たね、その単語。

マリア:簡単に説明しますとジェット戦闘機はレシプロ機と比べて幅広い速度で飛ばなければなりません。高速飛行では翼を付け根から後方に下げた後退翼が良いんですが、低速で飛ぶと失速しやすくなります。ならば、主翼を可変式にして速度に合わせた形状にすることで空力性能を向上させようとしたのが後退翼です。



ことは:確かに、男の子的にこの変形機構は来るものがあるわね。〔トムキャット〕が未だに愛される機体なのが頷けるわ!

真:男の子って……。

マリア:〔トムキャット〕は200km離れた爆撃機を〔フェニックス〕ミサイルで狙い撃ち出来、万一接近されても空戦で排除可能と言う優れた艦隊防空戦闘機として生まれたのでした!

ことは・真:おおー!

ことは:それで、〔トムキャット〕はどのような活躍を? もちろん艦隊を襲う爆撃機をバシバシ墜としたのよね?

マリア:……。

真:なんかマリアさんが固まってますけど。

マリア:あ、義兄が言っていました。「素晴らしい飛行機が、必ず華々しく表舞台に出られるわけではない」と……。

真:なにその上げて落とすパターン。

マリア:〔トムキャット〕の配備以後、空母が飽和攻撃にさらされる事態は起きませんでした。高価な〔フェニックス〕は使用を控えられ、現役中の戦果はヘリ1機(という説アリ)です。

真:ええっ! すごい開発費をかけたんでしょ?

マリア:〔フェニックス〕は鈍重な爆撃機を遠距離から仕留めるミサイルです。小型機が相手だと不意打ちでなければ回避される可能性があり、そもそも少数の小型機なら通常のミサイルでも対抗可能です。

ことは:でも、普通の防空戦闘機としても優秀なわけだから……。

マリア:ええ、優秀ではありました。致命的に高価と言う問題さえなければ……。

ことは:あー、変形する奴は普通のより高いものねー。

マリア:その通りです。何しろ戦時下(ベトナム戦争)にも関わらず、調達価格が高すぎて議会が紛糾するほどでした。それに……。

真:まだあるの!?

マリア:可変翼のせいで主翼が華奢だからミサイルをほとんど吊り下げられないんです。

ことは:それはまた……。

マリア:空母が対地攻撃任務に多用されるようになると、空対地ミサイルなどがいっぱい積めるマルチロール多用途機機が重宝されるようになりまして。こちらもマルチロール化を始めとした延命案もあったのですが、結局主翼問題が災いして難航しまして。気が付いた時には後継機の目途が立っていて……。

真

真:それ、どっかで聞いた話なんだけど……。

マリア:あと可変翼+リフティングボディの機体は扱いが難しいんです。現場に更なる負担を与え続けるよりはもっと使いやすい新型機を、と言う判断ももしかしたらあったのかも知れません。ただでさえ「制御された墜落」なんて言われる着艦スキルが求められるパイロットですから。

ことは:うーん、かっこよさならピカイチだし、性能もトップクラスなのに、時勢と合わなくなったせいで派手な活躍が無かったと。

マリア:とは言え、この〔トムキャット〕が貢献したのは数字で見える戦果じゃないと思うんです。

真:と言うと?

マリア:「200km離れた敵を撃ち落とすスペシャルな戦闘機と、トップガンで猛訓練を積んだスペシャルなパイロットが空母をがっちり守っている」って知ってたら安易に攻撃なんてかけられませんよね。

ことは:つまりそれはファッションのようなものね! プロパガンダと言っても良いわ!?

真:はいはい、今いいところだから。

マリア:そして〔フェニックス〕こそ使いませんでしたが、リビアでは〔スホーイ〕や〔ミグ〕の攻撃から空母をきっちり守っています。その他にもイランに売却された〔トムキャット〕、通称「ペルシャ猫」が米軍より劣悪な環境にも関わらず、30機程度のイラク軍機を撃墜したと言われていますね(イラン側の発表)。

イラン空軍の〔ペルシャ猫〕

マリア:映画の宣伝効果もあり、「米空母は鉄壁の守り」と言うイメージを植え付けただけで高い開発費の元は取れたと思います。

ことは:なるほど。空母を守らないといけない事態に陥らなかった時点で、理由がどうであろうと〔トムキャット〕は勝者だということね。

マリア:残念ながらお二人の世界ではその神話も破られたようですが。

ことは:その辺は本編で明かされるでしょう。さて、魔改造後の〔トムキャット〕について聞く前に、少し休憩しましょうか。ここから長くなりそうですし。

マリア:そうしましょうか。兄さんもまだ起きそうにないですし。

真:当然のように言うけど、気絶させたのあなただからね?

後編へ続く