また、お会いできて嬉しく思います。筆者の谷利と申します。
この文章は「王立銃士隊」サイトの作品の一要素を歴史的なアプローチから取り上げてみて、作品の世界観を拡げたり、歴史視点から作品に興味をもっていただこう! という試みになります。大河ドラマの本編が終わった後に流れる「○○紀行」のようになれば良いな~と考えております。

なお、今回は「銃士隊後編」となりますので先に前編をご一読いただけるようお願い申し上げます。
前回は「銃士隊」の誕生まで触れさせていただきましたが今回は「栄光から終焉」までいきたいと考えておりますのでよろしければまたお付き合いいただければと思います。


フランスの街並み


・『前門のハプスブルク、後門のユグノー』

さて、話を「ルイ13世」の頃のフランス王国に戻してまいります。当時のフランスは国内では半独立国化した「ユグノー」(プロテスタント教徒)にどう対処するかという内政問題と、婚姻外交政策で「神聖ローマ帝国」、「スペイン王国」、「オーストリア公国」と多くの国家の王権を占め、欧州の覇者へと上り詰めた「ハプスブルク家」との関係をどうするかという外政問題を抱えていました。
ルイ13世はこれらの対処に『三銃士』で「敵役」を務める、お馴染みの「リシュリュー枢機卿」を「宰相」に据えて問題解決に乗り出します。

リシュリューは「枢機卿」という「カトリック教会」の最高位に近い(ローマ教皇を選ぶ選挙「コンクラーベ」に参加できます)地位にありながら、現代風にいうなら「フランス王家第一主義」を掲げてフランスを「絶対王政」の時代へと導いて行きます。その仕事は、国内の反抗するユグノーを武力制圧、時にはローマ教皇領に自ら軍を率いて侵攻し、また、フランスと利害関係がぶつかる神聖ローマ帝国で発生した内乱を煽りに煽って「三十年戦争」へ発展させ神聖ローマ帝国を崩壊に導くほどでした。
彼の言葉とされる「ペンは剣よりも強し」は元々後世の演劇でのセリフといわれていますが、政治力が武力を越える「近世」という時代を的確に表しているのかもしれません。

「近衛銃士隊」はリシュリューの政策になくてはならない存在でもありました。彼とルイ13世は国内の安定化のために「貴族の特権」を削る事に腐心しています。通常ならば貴族達は軍役を拒否して対抗しますが「近衛銃士隊」という下級貴族による常備軍の存在があると「どうぞ、どうぞ」と権益を渡しているのと変わりませんので対抗手段を失う事になります。
ただ、この政策を進めるリシュリューは敵だらけです。その身を案じたルイ13世が許可したのが銃士隊のライバル組織でもある「護衛士隊」になります。


・『近衛銃士隊解散』

リシュリューはフランスの国内問題を片付け、「三十年戦争」の介入により仮想敵国の弱体化を図り続けて病死します。彼がここまでフランス王家に忠節を示したのは幼小時にユグノー戦争で父が戦死し、家族が路頭に迷うところを国王の計らいで助けられたからともいわれています。
彼の庇護者であったルイ13世も後を追うように亡くなりフランスは新体制へと移行します。
ルイ13世の後を継いだのが「太陽王 ルイ14世」で、リシュリューの後継となって国政を任されたのが「マザラン枢機卿」になります。
マザランは基本的にはリシリューの政策を継承し「重商主義」を取り入れフランスの黄金期への地均しをします。しかし、「銃士隊」についての態度は逆で解散命令をだしています。
銃士隊が解散に追い込まれた理由は色々あるようですが、大きな理由として「決闘禁止令」を無視して決闘騒動を度々起こした事があげられます。(「アトス」のモデルとなった人物も決闘で命を落としています)

「決闘権」は貴族の特権のひとつで、決闘権を悪用した「盗賊騎士」が神聖ローマ帝国を暴れまわった事もありルイ13世は禁止令を出していました。
幼い王を戴いてスタートしたフランスにとって治安を預かる「近衛」が王家の命を蔑ろにするというのはまずい事態だったと思われます。


・『銃士隊再結成』

マザランが死去するとルイ14世による親政が始まり「旧近衛銃士隊」と「旧護衛士隊」を合わせた「銃士隊」が組織されます。制服は皆様が良く知る「カソックコート」と「羽根飾りの三角帽もしくは二角帽」の姿になります。「旧近衛銃士隊」の第一小隊は水色のカソックで灰色の馬に股がり、「旧護衛士」は赤色のカソックで黒色の馬に股がります。
この時代の火薬は黒色火薬で燃える時に激しい煙が発生します。花火をした時に煙で視界が悪くなった経験はございませんでしょうか?
それよりもひどい煙が銃の普及と発砲により起きていて、彼らの派手な制服は敵味方の識別にも用いられています。
その第一銃士隊の隊長に就任するのがマザランの腹心として頭角を現していたダルタニアンになります。
銃士隊は、ルイ14世の拡大政策に従い各地を転戦していきます。


・『銃士隊の黄昏』

ダルタニアンはオランダとの戦争で味方として参戦して、無理攻めをしていたイギリスの公爵を庇って戦死してしまいます。
ルイ14世は寵妃にダルタニアンを喪ってしまった悲しみを手紙にしています。また、彼の遺された子ども達が母親から育児放棄を受けていると知ると引き取り自ら養育したといわれています。

銃士隊はその後もルイ14世に従い各地を転戦していきますが、そのルイ14世の軍事改革により戦場から居場所を失っていきます。

「歩兵」は「銃剣」を装備する事により、槍兵は必要なくなり全ての歩兵が銃を装備するようになります。その為彼らが得意とした下馬後、レイピアでの斬り込みは離れた距離では銃で滅多撃ちにあい、接近できてもリーチの長い銃剣で滅多刺しと自殺行為になってしまいます。
また、彼らが補助をしていた「騎兵」にも変革が訪れます。
騎士甲冑の胸当てとヘルメットだけを纏いメイン武器としてサーベルを装備した騎兵が生まれます。そう、「ナポレオン戦争」でも最強の騎兵と呼ばれる「胸甲騎兵」の誕生です。




「胸甲騎兵」が誕生した事で騎兵は衝撃力を取り戻していき、銃士隊の助攻を必要しなくなります。もし、彼らが戦場の現実を受け入れ「レイピア」から「サーベル」に持ち替えていれば運命は変わったのかもしれません…。
ついにルイ16世によって「税金の無駄遣い」とされ解散を命じられてしまいます。ルイ16世が銃士隊を解散させた理由のひとつに、彼の改革を邪魔する「法服貴族」との血の繋がりがあったともいわれています。
ブルボン朝最初の王であるアンリ4世の近衛騎兵から王朝を支え続けた銃士隊はブルボン朝最後の王により幕引きとなります。

さて、世界の銃士達も新しい戦場へと適合できずに歴史の流れに呑み込まれていきました。
「王立空軍物語」では空軍のパイロットは「銃士」を名乗っています。彼らの多くは自分たちの組織の歴史から名乗っていると考えられますが、現代からの転生者である「南部隼人」は地球世界の銃士達を知っているからこそ「名誉」を持って名乗っているのかもしれませんね。

お付き合いいただきましてありがとうございました。




マリア

マリア:そう言えば兄さんも前世では三銃士にハマったって言ってましたね。「これで飛行機が登場したら最高の小説なんだがなぁ」なんて言ってたのはやっぱり飛行機狂の兄さんですが(汗)。
 谷利さん、今回もありがとうございました。