■寸劇「王女殿下の憂鬱」

隼人:王女殿下! 報告します! 日本陸軍が送り出した戦闘機達は基礎技術で劣っているのにも関わらず、技術者やパイロットたちの情熱のおかげで、各国から極めて高い評価を受けています!

〔隼〕→ベテランが乗った〔隼〕は侮れない

〔鍾馗〕→インターセプターとしては最適な存在

〔疾風〕→高性能に敬意を表したフランク大佐が自分の名前を与える。


エーリカ:他の機体は分かったわ。私の愛機〔飛燕〕はどの様な活躍を?



隼人:(冷や汗を流しながら)王女殿下……〔飛燕〕は、米軍パイロットから「日本の戦闘機で最も食いやすい(撃墜しやすい)」と。

エーリカ:(プルプル震える手で眼鏡に手を当て)次に当てはまる者以外は退室なさい。

1.〔飛燕〕のスラリとしたボディに痺れる。

2.武装である〔マウザー砲〕の語感が素敵。

3.史実日本に液冷戦闘機はきついのは知ってる。でも〔飛燕〕が好きなんだ!

隼人:アッハイ、全部当てはまるんで残ります。

エーリカ:何で〔飛燕〕だけそんな扱いなのよ! どいつもこいつもミツビシだナカジマだ言って、川崎だって頑張ってるのよ! バイクファンすら川崎製品は色物扱いするし! 良いじゃない! 独自技術って大事よ! 人と違う事して何が悪いのよ!
 (手に持った鉛筆を机に叩きつけて)ちくしょーめー!

隼人:あの、エーリカさん? そろそろ止めないと本編でもそう言うキャラだと思われるので……。

エーリカ:って言うかいきなり呼びつけて何やらせるのよ! 第1部には登場しないって言われてたのに呼ばれたから大喜びだったのに、まるで私が三枚目キャラみたいじゃない!

隼人:いや、当たらずとも遠からずの様な……。

エーリカ:……あら、ちょうど射撃訓練の的を探していたのだけれど、目の前にちょうど良い木偶人形が……。

隼人:すみません許して下さい。なんでもしますから。

エーリカ:なんでもするって言ったわね? じゃあ、どうして〔飛燕〕が「食いやすい」のよ? 詳しく教えて頂戴。

隼人:じゃあ、その辺は史実と王立空軍世界の違いを押さえながら説明して行こうか。

エーリカ:聞かせて貰いましょう!

■史実の〔飛燕〕(その開発経緯と弱点)

隼人:戦闘機には速度と火力で戦う重戦闘機と、格闘戦で戦う軽戦闘機がある事は第2回で述べた。
 重戦闘機の必要性を模索していた陸軍は川崎飛行機に液冷エンジンタイプ、中島飛行機に空冷エンジンタイプの重戦闘機の開発を命じた。

エーリカ:知ってるけど解説の為に一応聞くわね? 「液冷エンジン」と「空冷エンジン」の違いは何かしら?

隼人:飛行機に限らずレシプロエンジンは燃料を燃やして動力を生み出す機構だから、どうしても発熱してしまう。
 これを放っておくとオーバーヒートして動かなくなるので、何らかの方法で冷やさなければならない。
 エンジンに直接風を当てて冷やすエンジンを「空冷式」、冷却液を循環させて冷やす方法を「液冷式」と言う。

エーリカ:ふむ、その違いはどんなものなの?

隼人:空冷は構造がシンプルなおかげで軽量で製造や整備が簡単だ。何しろ特別な仕組みは無くただ風を当てるだけだからな。おまけに頑丈で、シリンダーの1本くらい破壊されても動き続ける。
 半面風を当てる面積を確保しなければならないので、どうしても前面の面積が大きくなる。つまり空気抵抗が大きくなって高速性の足かせになる。

エーリカ:液冷は?

隼人:冷却液を使用すれば、前面の面積を大きくする必要はない。空気抵抗の軽減を第一に考えて形状を決められるから、エンジンの出力が同じなら液冷機の方が高速になる。
 「速さ」を売りにしている戦闘機の多くが液冷機である事がその事実を物語っているな。

エーリカ:確かにそうね。イギリスの〔スピットファイア〕もドイツの〔Bf109〕も液冷機だわ。

隼人:ただどうしても構造が複雑になるので製造や整備が大変になる。それから燃料とは別に冷却液のタンクを積まねばならず、重量が重くなる。
 他にも冷却液を循環させる構造だから、エンジンが被弾して冷却液が漏れ出すと動かなくなるなどの弱点を抱える事になる。冷却液の放熱を行うラジエーターも構造上弱く、ここに被弾すると即墜落だ。

エーリカ:液冷機の方がデメリット多いじゃない。

隼人:「スピードが上がる」と言うメリットがそれを押してでも魅力的なのさ。あとは、液冷には高高度性能に秀でた機体が多い。空冷は空気の薄い高空だと冷却効果が低くなるけど、冷却液で冷やすなら影響は少ないからな。ただ、日本軍や米海軍の様に空冷に拘る組織も存在する。

エーリカ:日本の飛行機は基本的に空冷よね?

隼人:日本は島国だからな。運用するのが地続きなら、エンジンが故障してオーバーヒートしても不時着でワンチャンスあるが、海に落ちたら墜落死を免れても遭難する可能性は高い。速度を犠牲にしてでも堅実案を採るさ。
 この辺は海上で戦う米海軍でも事情は同じだ。
 日本の場合は、空冷機の方が造り易いし整備も楽と言う懐事情もあって陸軍なんかはこっちの事情が主だな。

エーリカ:じゃあ何でわざわざ苦手な液冷を造ろうとしたの?

隼人:大馬力のエンジンが他に無かった。〔ゼロ戦〕や〔隼〕の〔栄〕エンジンは軽量だけど馬力が心もとない。
 使えそうな大馬力エンジンは爆撃機用の大型で、転用を考えられてはいたけれど、上手く行くかは分からない。
 空冷エンジン本場のアメリカとは仲が悪くなってるし、「使えそうな戦闘機用エンジン」を探してみたら、同盟国ドイツの液冷エンジンしか無かった。
 それからこの辺は俺の想像だけど、日本人は日本人なりに考えていたんだと思う。もし空冷機ばかり造っていて時代の趨勢が液冷エンジンに傾いた時、まったくノウハウが無かったらやばいだろ?
 アメリカは陸軍が液冷エンジンを多用してたから技術を流用できるけど、日本の場合は陸海共に空冷が主流で、「一応研究しておこうか」と言うのは健全な考え方だ。物事はこの「一応やっとこう」が後に良い結果に繋がる事も多い。
 失敗した時の為に、既存技術である空冷戦闘機を保険で造らせておいたのも良い結果を生んでいるな。

エーリカ:隼人の前世ってとんでもない印象があるけれど、するべきことをしている人はちゃんといるのね。

隼人:川崎は液冷戦闘機をいくつか開発してるし、ドイツには〔DB601〕と言う優秀なエンジンがあったからこいつの製造権を買ってきて試しに造ってみた。
 まあ同じエンジンをコピーするのに、陸海軍で別々にアレンジした結果仕様が別で部品を融通しあえないと言ういつもの負けフラグも存在するんだが。

エーリカ:褒めた矢先にそれなわけ?

隼人:小手先の工夫で日本人の右に出る民族はそういないが、小手先の工夫に熱中しすぎて本質を見失うオタク気質においても日本人の右に出る民族は居ない。

エーリカ:貴方が言うと説得力があるわね。

隼人:(スルーして)話を戻すが、実はこの〔DB601〕エンジンが曲者だった。

エーリカ:え? 性能が悪かったの?

隼人:そうじゃない。このエンジンは恐ろしく凝った設計で、製造が極端に困難と言う、コピーを始める前からやっぱり負けフラグを立てまくっているエンジンだった。
 日本人がオタク気質なら、ドイツ人は「凄い技術を作ってみたけど、ここまで凝る必要あったっけ?」と言う技術狂いだ。

エーリカ:どっちも本質を見失ってるのは変わらないじゃない!

隼人:うん、だから負けた

エーリカ:……。

隼人:で、散々苦労してコピーしてみたところ、試作機は同じエンジンを積んだドイツの〔Bf109E〕戦闘機を上回る速度性能を見せた。しかも〔飛燕〕は〔Bf109E〕が苦手な格闘戦もある程度想定していた事、航続距離が2850kmと〔Bf109E〕の3倍以上と言う美点まであった。

エーリカ:〔飛燕〕凄いじゃない!

隼人:と、思うだろ? 〔Bf109E〕が活躍したのは1940年の「バトル・オブ・ブリテン」と呼ばれる戦いだ。〔飛燕〕が戦場に登場したのは1943年。ドイツは既に改良型の〔F型〕や〔G型〕を送り出しているから、ぶっちゃけ周回遅れだ。
 おまけに、速いと言っても米軍機には敵わず、格闘戦も〔隼〕程は得意ではない。「食いやすい」と言う評価はその中途半端さに起因する

エーリカ:貴方、〔飛燕〕に恨みでもあるの?

隼人:大好きだが? ダメなところもひっくるめて愛するのが俺の飛行機道だ!

エーリカ:……愛情を注ぐ対象が女性だったらさぞモテたでしょうに。

隼人:(スルーして)で、もう1つ問題が起こる。複雑でコピーが難しいエンジンなら、大量生産はもっと難しい。
 試作品は熟練職人が部品をヤスリで削って調整していたから何とか設計通りの性能を発揮したものの、量産してみたらありとあらゆる不具合が〔飛燕〕を襲った。
 油漏れやオーバーヒートに加えて、資源不足で素材に使うレアメタルをケチった代償で、プロペラを回すためのクランク軸がポッキリと折れると言う不具合まで起こる。

エーリカ:それはエンジンの体を為していないレベルなのでは……。

隼人:しかも3000機近く造られたのにもかかわらず液冷エンジンに精通した整備兵の養成が不十分で、整備に必要な人員や部品を運ぶのが困難な遠方に送られた事で状況がさらに悪化

エーリカ:近くの戦場か特定地域で集中運用する選択肢は無かったの?

隼人:なまじ航続距離に優れていた事に幻惑されてしまい、つい遠方へ送ってしまった

エーリカ:ヒドイorz

隼人:まあ残念ながらそれが前世日本の現実だ。
 自動車の大量生産技術を持っていたドイツ製のエンジンを、工業国としてよちよち歩きの日本が使いこなすには何もかもが足りなかった。
 ある程度は工夫で補ってしまう日本人でも、戦況の悪化でどんどん時間も人材も資源も奪われてゆく状況ではどうしようもない。
 なお、そのドイツですら、航空機の総生産数は英国に負け、ソ連に負け、アメリカに至ってはドイツの3倍の生産力を持っている。しかも、軍艦も戦車もジープも山ほど造ってそれ。

エーリカ:一応聞いておくけど、前世日本の生産数は?

隼人:ドイツの7割ちょいくらいかな?

エーリカ:ああ、負けるべくして負けたのね。


■史実の〔飛燕〕(じゃあ良い所は?)

エーリカ:ううっ、実は〔飛燕〕ってダメダメだったのね。

隼人:お前、相変わらずメンタル弱いな。

エーリカ:ほっといてよ! 自分が愛情を注いだ飛行機がダメダメなんてショックも良いところだわ。

隼人:〔飛燕〕がダメダメ? そんな事は断じてない
 〔飛燕〕は運用側の無理解や不運など様々な状況が重なって悪評に繋がったし活躍も限定的だが、その存在意義はとてつもなく大きい

エーリカ:ぐすっ、本当に?

隼人:〔飛燕〕の優れた点、それはコンセプトが日本軍の実情に合致していた事にある。
 〔飛燕〕を生み出した土井武夫技師は、「中戦」と言う概念を打ち出した。これは「重戦闘機の様に速くて重火力を持ち、軽戦闘機の様に軽快に格闘戦を行う」と言う言わば「良いとこ取り」の戦闘機だ。これ、何処かで聞いた話じゃないか?

エーリカ:ぐすっ、ひょっとして、第3回に出てきた〔疾風〕のこと?

隼人:そうだ。発想の出所は違うとはいえ、より後発の〔疾風〕がこの〔飛燕〕と似通ったコンセプトであることは興味深い。

エーリカ:そんなの中途半端になるじゃない。

隼人:ところが日本軍の場合そうでは無かった。前回より突っ込んだ話をしよう。
 速度を決定付けるエンジン技術はアメリカにどうせ敵わない。
 求められるエンジンがどんどん高度化した段階で、米軍機より高速な飛行機を造るのはほぼ無理なんだ。
 だからある程度格闘戦で戦わざるを得ない。でも従来の〔隼〕は軽快さこそ最強クラスだけど高速で逃げる敵を追えない。
 米軍は一撃離脱用と格闘専用の戦闘機を上手く使い分けてたけど、それを真似したら結局数の勝負になって勝ち目はない。
 だからそこそこの速度と火力で良いから重戦闘機の様に突撃や追撃が行えて、〔隼〕ほど小回りが利かなくても良いから乱戦に持ち込んで格闘戦が行える。日本はそんな戦闘機を必要としていた。
 川崎は〔飛燕〕の他に〔キ60〕と言う普通の重戦闘機タイプも造っているが、武装では〔飛燕〕を上回っていたものの〔飛燕〕の方が速いし、格闘戦も出来るならそっちの方がお得じゃんと言う事で〔飛燕〕が採用された。

 火力も後に強化されて〔キ60〕と同じレベルまで向上しているしな。
 そして実は〔飛燕〕の「中途半端さ」は大きな利点でもあったんだ。

エーリカ:そんなに褒めて良いの? まだ何かしっぺ返しがあるんじゃないの?

隼人:どんだけ疑り深いんだよ!? 良いから聞けよw
 確かに〔飛燕〕は身の丈に合わないエンジンを大量生産し、補給体制が貧弱な戦場に送り込まれたせいで「食いやすい」と言われ、味方からも扱いにくいと嫌われた。せっかくコピーしたエンジンの性能も周回遅れだ。
 だが、それは〔飛燕〕と言う戦闘機の素性が悪い事を意味しない。その証左が〔五式戦闘機〕の存在だ。

五式戦闘機

隼人:〔五式戦〕は製造困難な〔飛燕〕のエンジンの代わりに余っていた空冷エンジンをくっつけてみたと言う、ただそれだけの機体だ。だが、こいつは〔飛燕〕の素性の良さを証明する結果になった。

エーリカ:それは自分の長所を殺しちゃうんじゃないの?

隼人:確かに、空気抵抗が増えて速度は落ち込んだが、代わりに機体が軽くなって格闘性能とネックだった上昇力が向上した。整備兵や物資の不足で相変わらず不具合も多かったが、それでも液冷エンジンよりはマシになった。

エーリカ:そんなの器用貧乏になるじゃない。

隼人:器用貧乏は嫌いか? 何でも卒なくこなす奴は学校でも職場でも重宝されるぞ? 戦争も同じことだ。特化型は華があるが不測の事態にめっぽう弱い。器用貧乏は尖った良さが無い代わりに何でもこなせる。

エーリカ:あ! 昔隼人が言ってくれた「何でも平凡なのは何でもできるってことだ」と同じことね。

隼人:そ、そんな事言ったっけ?

エーリカ:ほら、士官学校の時に「俺はお前を尊敬している。お前は誰よりも努力して……」

隼人:わーわーわー!

エーリカ:どうしたの?

隼人:昔の黒歴史をばらすな!

エーリカ:まあどうせ、『士官学校編』が公開されたらばれちゃうけどね♪

隼人:俺はお前のそういう所が怖いよ。……まあいい、米軍は重戦闘機と軽戦闘機の両方をどんどん造って攻めてくる。なら両方にそこそこ対応できる戦闘機で対抗するしか道は無いんだ。そしてその方向性を打ち出したのは〔飛燕〕だ。

エーリカ:でも、私は〔飛燕〕が強敵をバシバシ撃ち落とす話が聞きたかったのよ!

隼人:(にやりと笑って)ところがあるんだな。そんな話が。

エーリカ:え? あるの?

隼人:とある研究家は〔飛燕〕の器用貧乏は設計が悪かったのでは無く、本来の良さを発揮するにはエンジンのパワーが足りなかっただけだったと主張している。
 それを証明するのが、現場の米軍パイロットと正反対の調査結果だ。これは鹵獲(捕獲)した機体を後方に送って調べたら「攻撃力と防御力に優れた素晴らしい機体」と評価されている。つまりちゃんと整備したら強かったと言う側面もあるのではないかと。

エーリカ:! 隼人の言いたい事が分かったわ! 私の乗っている〔飛燕〕は整備兵がとても優秀なベテランだわ!

隼人:前世との評価の格差はそこがキモだ。〔飛燕〕の可能性を示す事例として、1944年10月12日に台湾で行われた空戦がある。この戦いで投入された〔飛燕〕はたったの2機、戦った相手は36機の〔ヘルキャット〕だ。

エーリカ:戦力差13倍!? 詰んでるじゃない!

隼人:ところが結果は違う。最終的に2機の〔飛燕〕は袋叩きにされて失われているが、機体の防御力が幸いしてか、パイロットは2名とも不時着して生存。
 たった2機の〔飛燕〕を落とした代償として、米軍は6機の〔ヘルキャット〕が撃墜され、5機が撃破(戦闘不能に追い込む事)されている

エーリカ:え? 無双レベルじゃない!

隼人:勿論、これには様々な要因がある。
 会敵状況が有利な事、パイロットの田形准尉と真戸原軍曹がベテランであり的確な戦術と連携を取った事がこの結果を生んだが、田形准尉は戦後「〔飛燕〕の高速性能に助けられた」と手記で語っている。
 戦果を残した人間とは言え、自分の命を預ける飛行機がヘボだったらこんな評価を下すと思うか?

エーリカ:(ふるふる)。

隼人:ちなみに、真戸原軍曹は飛行経験こそ豊富だが、実戦は初めてだったことも付け加えておく。

エーリカ:凄いじゃない〔飛燕〕! なんて凄い飛行機なの!

隼人:(手のひら返しやがった)〔飛燕〕は確かに諸々の問題で記録に残る大戦果を残したとは言い難い。しかし適切に整備運用された〔飛燕〕はパイロットから信頼され、敵国からも脅威とみなされていたのは様々な証言からも分かる。

エーリカ:結局、機械って「性能がどうか」だけじゃなくて「どうやって使うのか」が大事なのね。

隼人:それだよ! それ! もし、〔飛燕〕を始めとした不遇な飛行機達が、適切な補給や整備、適切な戦場、適切な戦略や戦術で戦っていたら……。それを考えたらわくわくしないか?

エーリカ:するわ!(ぐっと拳にぎって)

隼人:そのわくわくこそが、作者のはぎわらが「王立空軍物語」を書こうと思い立った動機だよ。

エーリカ:隼人の飛行機バカが少しだけ分かった気がする。

隼人:だろ? 飛行機バカは飛行機のスペックや使われた技術そのものだけを愛してるわけじゃない。それに付帯する「文化」や「美学」を愛しているんだ。
 皆がそうかは知らないが、少なくとも俺はそうだ。

エーリカ:何だか、隼人のおかげで〔飛燕〕がもっと好きになっちゃった。実は〔飛燕〕は私に似てるのね(無邪気な笑顔)♪

隼人:(赤面して目を逸らす)

エーリカ:どうしたの?

隼人:な、何でもない(お前のそういう反応が一番困るんだよ)。


三式艦上戦闘機〔海燕〕

エーリカ:それで、「王立空軍物語」の〔飛燕〕はどう生まれ変わったの!?

隼人:ふっふっふ、それは……。

エーリカ:それは?

隼人:〔飛燕〕の登場はまだ先なので、今は言えん。

エーリカ:ここまで言っておいてそれ!?

隼人:と言う訳にもいかんので、〔飛燕〕のバリエーションを紹介したい。三式艦上戦闘機〔海燕かいえん〕だ。

エーリカ:『鋼翼の7人』編で隼人達を助けに来た戦闘機ね。

隼人:史実〔五式戦〕に当たる空冷エンジン型の〔飛燕〕は、既に〔飛燕改〕として実用化してるんだが、それに目を付けた海軍が、〔紫電改〕艦上型までの繋ぎとして艦載機に改造したのが〔海燕〕だ。

エーリカ:〔五式戦〕の実戦配備を2年も早く前倒したのね。

隼人:元々既存のユニットを組み合わせた兵器だから、俺が「そう言うのあるよ」とだけ教えたらすぐ完成したよ。史実でネックだったエンジンの出力強化も俺が何か吹き込むまでもなく実現してたし。

エーリカ:海軍が陸軍の戦闘機を導入したのね。

隼人:兵部省の決定だな。前世の陸海軍はコンセプトがダブった機体を双方で計画していたが、兵部省が陸海軍の装備の一本化・効率化を推し進めた結果、機材や弾丸、部品の規格統一が行われている。

 おかげで前世で量産されたのにこちらでは試作機止まりだった機体もあるがな。

エーリカ:で、〔海燕〕は凄い性能なの?

隼人:いんや、もともと繋ぎの為に間に合わせで調達した機体だから。過給機も一段式だし、機体特性は空母に積めて稼働率が高い〔五式戦〕って感じかな? 例によって艤装や燃料は別物なのでスペックは多少上がってはいるし、見えない部分で使い勝手がいい点は上位互換ではある。

エーリカ:またそうやって地味な設定を作るんだから! そんなのでよく〔コルセア〕に勝てたわね。

隼人:戦場が日本機の得意な低空域だったからな。おまけに上方から襲い掛かる優位戦だったから、エンジンの性能差なんて簡単にひっくり返ったんだ。これが逆の立場なら苦戦は免れなかったろうな。

エーリカ:〔コルセア〕、良いとこなしね?

隼人:あれは走攻守に優れた素晴らしい飛行機だぞ。お話の展開上活躍させられなかったが、やっぱり逆ガル翼はかっこいい!

エーリカ:あなた、嫌いな飛行機なんて無いでしょ?

隼人:何故分かった!?

エーリカ:なんか、馬鹿にされてる気がしてきたわ。


次回に続く

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA