烏丸補佐官って……。
エマ:ねえ、ハル君。私ずっと気になってたんだけど、そーちゃんって脇役の癖にやたらキャラ濃いよね。
ハル:それに関してですが、作者のはぎわらからコメントをもらっています。
「正直悪乗りしました。申し訳ない」
だそうです。
エマ:ちょっとぉ!
シルヴィア:そもそも、
1.肩書が「補佐官」
2.髪が薄い
3.いつも上司にゴマをすっている
4.実は剣の達人
これだけ揃ったらピンとくる読者も多いんじゃないか?
エマ:前作の神尾帯刀もかなり悪乗りしてたよね? 作者があの作品大好きなのはわかるけど。
ハル:ま、まあ烏丸補佐官の場合は「人たらし」「主人公の後援者」と言う要素が加わってますし、別に事なかれ主義者でもありません。話が進むと完全に別人になりますし。ただ、登場時のキャラ付けでオマージュ元がちらついた感は否めませんね。作者は「次回はもっと上手くやるから!」と言っていました。
エマ:「やらない」って選択肢はないんだ(苦笑)。
何で補佐官だけ名前が漢字なのか
エマ:それ、私も気になってた! 屠龍王国に漢字文化なんてないよね?
ハル:漢字表記の方が差別化できると言う記述上の理由もあるようですが、実は補佐官は僕と同じ移民の末裔なんですよ。補佐官のルーツは東洋の「九頭竜皇国」と言う国で、いまでこそ独立国ですが、かつて隣国の支配下にあった時代がありまして、その時に大陸西部に移民した人がかなりいたようです。補佐官の使う九頭竜式の剣術も、源流は東方にあるようです。
シルヴィア:補佐官の剣はしなやかで戦いづらかったな。あの体捌きを是非盗みたいものだ。
ハル:そう言えば、九頭竜で秘蔵されていたアーティファクトも、移民と一緒にかなりの数が西方に流れたようですね。補佐官の一族にも伝わっているかも知れません。
エマ:あーはいはい。今後の布石ね。
パトローネスとクリエンテス
シルヴィア:気になっていたのだが、登場人物の名前は欧州系なのに、何故これだけラテン語なのだ?
ハル:作者によると、異世界感を出す為にあえて多国籍にしたそうです。あとは、大陸西方は割と人の流れが大きいので、どうしても多文化になってしまう側面も。
エマ:ハル君も北方からの移民だものね。
シルヴィア:「パトローネス」と言うのは、明らかに「パトロン」の語源だな。
ハル:はい、「パトローネス」「クリエンテス」と言う文化は古代ローマで盛んにおこなわれていました。クリエンテスはパトローネスの助力を受ける代わりに、パトローネスが危機の時は何があろうと馳せ参じて助けなければなりません。
有名なのは、ユリウス・カエサルの腹心ラビエヌスですね。彼はカエサルに忠誠を誓いながら、パトローネスであるポンペイウスがカエサルと敵対関係になってしまったために、カエサルと戦って戦死しています。
シルヴィア:ふむ、命がけの文化なのだな。
エマ:実際、愛しのパトローネスの為に命をかけちゃった人もいるしねぇ。
ハル:ちょっ、止めてくださいよ。
シルヴィア:いやいや、感謝しているぞ。ハルは自慢のクリエンテスだ。
エマ:あー、これは全然伝わってないね。
ハル:ごほん! 本編では「篤志家が名誉のために行う」とありますが、これはローマの文化ではなく、戦前日本の「書生」をイメージしているそうです。
エマ:「書生」って昔の小説とかに良く出てくるけど、そもそも何だっけ?
シルヴィア:確か、若い頃の明智小五郎も書生だったな。
ハル:もう誰もメタ発言を気にしなくなりましたね(苦笑)。書生と言うのは、お金持ちが有望な若者に寝食を提供する文化です。代わりに若者は支援者の身の回りを世話することもあったようです。
エマ:ふーん。それで「自分は優秀な若者を支援している」ってアピールするのね?
ハル:それだけじゃありません。もしその若者が何らかの分野で大成したら、一流の人物の後援者としてこれ以上ないコネクションが出来ますし、社交の場で「彼はわしが育てた」って鼻高々ですよ。
シルヴィア:なかなかに現金な話だな。
ハル:そうはいっても、さっきの明智さんみたいにやる気のない書生もいたみたいですけど。
シルヴィア:だが彼はイメージチェンジしてから名探偵として有名になったから、支援していた篤志家も結果オーライだろう。
エマ:シルヴィ、さっきから妙な事に詳しくない? キャラ崩壊はほどほどにね?
シルヴィア:うっ!