物語を終える前に、その後の英雄たちについて触れておこう。

 イリッシュでの激戦後、攻め手を見いだせない帝国派が打った悪手に付け込む形で「クロア内戦」は終結した。
 帝国派を支援するゾンム帝国にとってこの戦いは戦争準備と反対派の粛清が終わるまでの時間稼ぎに過ぎなかった。
 ゾンム帝国の正規軍がクロア半島になだれ込み、ライズ全域を巻き込んだ「方舟戦争」と呼ばれる世界大戦が勃発する。
 アルフォンソとヴェロニカは、今度は全権を持って挑んできた勇将パットンと再び激戦を繰り広げる事になる。



 アルフォンソは大将に昇進し、彼に従って参謀長として前線に戻って来たヴェロニカを見て、彼女を知る者は大いに面食らった。
 以前のしかめっ面はどこへやら、報告を受ける際、必ず魅力的な笑顔で「ありがとう」と付け加えるのである。それでいて、アルフォンソの前では以前のぶっきらぼうな態度を演じるものだから、意味するところは明白だった。
 元々容姿に優れていた彼女の変化に、その人気は一気に高沸した。
 男性士官や部下たちは、「ありがとう」を聞きたさに彼女に用事を言いつけらようと雑用に励み、女性兵士すら彼女を山車に「アルフォンソとの仲がいつ進展するか」と言う恋バナに興じた。
 特にイタリアから派遣されてきた士官たちは「口説いておけば良かった!」と地団駄を踏んで悔しがったと言う。
 もっとも、イタリア人はその言動に反して身持ちの固い者も多いので、これはやっかみ半分の祝福だったのかも知れない。

 停戦が報じられた時、クロア軍と対峙していたパットンは真っ先に敵陣に乗り込み、仇敵AAAと握手をした。パットン、アルフォンソ、ヴェロニカの3人は暫し会談した後、残務処理に戻る。
 腹心から2人の印象を聞かれたパットンは冗談めかして両手を挙げたと言う。

「AAAの勝ちだよ。俺にはあんなじゃじゃ馬を使いこなせん」

 強敵との戦争を満喫した彼の表情は、とても晴れやかだったと言う。交通事故で重傷を負い、魔法治療で一命を取り留めてから、人生観が変わったのか人当たりが柔らかくなり、マスコミ受けするキャラクターとして重宝されたが、兵士達の前に出ると「臆病者は銃殺だ!」とぶちかます癖は相変わらずで、これは死ぬまで変わらなったと言う。
 アルフォンソとヴェロニカとは、年に1回は必ず旧交を温める仲だったと言う。

 あの時消化方法を直訴してきた南部隼人少尉は、着々と腕を上げてゆき、「蒼空の隼」「セーントの竜殺し」と言った名で語り継がれる伝説の飛行機乗りとなった。
 また、アルフォンスを抜擢した大公カタリーナもある理由で歴史に名を残す事になる。
 それについては、また別の機会に語ろう。

 クロア公国の至宝として名高い名将アッパティーニ兄弟。温和な兄アルフォンソと奔放な弟レナートは正反対の生き方をしているように見えたが、仕事上のパートナーを伴侶にした事、非常に愛妻家であったことは共通している。
 夫婦円満の秘訣を問われた2人は、口を揃えて答えたと言う。

 「女房の好きにやらせてやる事ですよ」と




※これにて終了です。
 レナートの恋バナはいつかやるつもりです。まあ、彼が好きになる女性なので、普通の恋愛はあり得ないですがw