消火作業をを終えたアルフォンソは、息も絶え絶えで運び込まれ、ヴェロニカは魔法医が到着するまで生きた心地がしなかった。
 昼夜突貫の治療により元気を取り戻したものの、魔法治療はそれなりに体力を消耗する。前身傷だらけの彼は即快癒とはいかず、深刻な傷から順に治療し、体力が戻れば次の傷と言う具合に、3日間手術台とベッドを往復する事になった。

 条約国、反条約国は揃って自陣営の将軍を褒め称えた。パットンを笑いものにしていたマスコミも「彼こそハンニバルの生まれ変わり」と書き立てたし、条約国側のメディアも「アルフォンソこそスキピオの再来」と礼賛した。
 クロアと優先協商権を持つイタリア王国の統領ドゥーチェムッソリーニは、スキピオを名乗るアルフォンソの勝利に狂喜し、国王に掛け合って彼にスキピオの称号である「アフリカヌス」の名を贈った。
 何故サヴォイア朝の国王が共和制ローマの称号を贈る許可をするのだと失笑する者も居たが、一応イタリア王国はローマの後継者を自称していたから、こまけえ事は良いのである。
 以後アルフォンソは「アルフォンソ・アッパティーニ・アフリカヌス」と名乗る事になり、頭文字が全てAである事から、人々は彼を「AAA(トリプルエー)」と呼ぶようになる。



 戦闘が終息した後、ヴェロニカはアルフォンソの見舞いに訪れた。

「大口を叩いておいて、詰めの甘さで勝ちを逃したのは私の責任よ」

 神妙に頭を下げる彼女に、アルフォンソは「ぷっ」と噴き出す。今度はヴェロニカがむくれる番だった。
 アルフォンソは治療の為魔法で免疫力を力づくで強化した為、一時的なアレルギー症状を起こし、顔は腫れあがっていた。それでもいつもの人懐っこさを見て、心底安心している自分に気付き、ヴェロニカは居心地の悪さを感じた。

「君は僕をスキピオにしてくれただろ? それに、君はこのままで済ます気は無いんじゃないか?」

 にやりと笑うアルフォンソ。
 それを見たヴェロニカは、自分でも気づかないうちに不敵な笑みを浮かべていた。

「勿論よ。確かに戦車の運用では私よりパットンの方が上でしょう。でも悪だくみなら私”達”には敵わない」

 入り口で吹き出す声が上がった。
 救国の英雄2人が邂逅すると聞いて、タオルを取り替える口実で野次馬にやって来た看護婦に聞かれたのである。
 言葉を失う2人の視線に気まずくなった若い看護婦は、「あの、お幸せに」と余計な一言と共に退出する。
 その後、2人はろくにお互いの顔を見れなかったと言う。